「ちゃんと話さなきゃ」と思いながら、
いつの間にか、月日だけが過ぎていた。
親が年を取り、
通院や生活の不安が現実味を帯びてきたとき。
ふと、心の中でこうつぶやく。
「そろそろ、その話をしなきゃいけないかもしれない──」
介護のこと。
お金のこと。
兄弟姉妹との分担のこと。
わかってはいる。
けれど、どう切り出せばいいのか。
何から手をつければいいのか。
考えるほど、言葉に詰まってしまう。
ここで語るのは、
「避けてきた話」と、静かに向き合うための道しるべです。
- 介護の現実と、お金にまつわる数字
- 親との話し合いのコツ
- 家族間トラブルを防ぐ方法
- 自分の人生とのバランスのとり方

アルジ(Aruji)
誰もがいつか直面するテーマだからこそ──
今、少しだけでも準備しておきませんか。
目次
「いつか話そう」がその日になってしまった
「まだ大丈夫」「元気だし、今すぐじゃない」
そう思っていた矢先に、その日は突然やってきます。
🔹転倒・入院・認知症の兆候──きっかけは、突然に
- 玄関でつまずいて骨折した
- 道に迷って帰ってこられなかった
- 定期的な通院が必要になった
ほんの些細な出来事が、
「介護」という現実の扉を、静かに開けてしまいます。
🔹話しておけばよかったという後悔が残る前に
多くの人が、最初の段階で「何を話しておけばよかったか」を痛感します。
- 介護が必要になったときの希望(施設か、自宅か)
- 金銭的な備え(年金、貯金、保険の状況)
- 通院や介助の連絡・役割分担
話し合っておけば、避けられた混乱や衝突は少なくありません。
🔹「今はまだ早い」と思っているその瞬間こそ、好機
介護の話を切り出すには、お互いが元気なうちが最適です。
- 冷静に選択肢を比べられる
- 親の意志を正確に聞ける
- 急なトラブルで慌てるリスクを減らせる

アルジ(Aruji)
「そのうち話そう」ではなく、「今、少し話してみる」ことから始めませんか。
✍️ POINT|その日は、想像よりも早くやってくる
「まだ先」と思っていたのに──
いざ起こると、人は驚くほど準備不足です。
今はまだ、大丈夫。
けれど「大丈夫な今」こそが、
未来の自分たちを守る時間でもあるのです。
介護が始まると、何が変わるのか?現実を整理
「介護が必要になったら、大変そう」
そう漠然と考えていても、実際に始まると想像以上に──日常が変わっていきます。
🔹時間の使い方が大きく変わる
- 仕事の合間に病院への付き添い
- 毎日の食事やトイレ、着替えの介助
- 夜間の見守りや緊急対応
たった1時間の通院でも、移動・待機・介助で半日が潰れることも少なくありません。
🔹家族関係に圧力がかかる
- 介護を担う人に負担が集中する
- 他の家族との温度差が生まれる
- 金銭や判断をめぐって意見が食い違う

アルジ(Aruji)
「どう分担するか」を明確にしていないと、
後から感情の衝突につながるケースもあります。
🔹お金の出入りが変わる(支出増・収入減)
- 介護用品の購入や訪問サービスの利用
- 収入が減る(介護のための離職・時短)
- 自費でのリフォームや交通費なども増加傾向
介護は、「時間」「感情」「お金」のすべてに影響を与える生活の再構築イベントです。
🔸何が変わるのかを事前に見つめておくこと
「介護って大変そう」で終わらせず、
どの領域にどう変化が起きるのかをイメージしておくこと。
それが、混乱を防ぎ、冷静な対応を支える準備になります。
✍️ POINT|介護とは「暮らし全体の再設計」でもある
誰かが倒れてから考えるではなく、
倒れる前に、どこまで整えておけるかが、家族全体の支えになります。
介護にかかるお金は想像以上に多い?
「介護保険があるから、そんなにかからないよね?」
そう思っていたけれど──
実際は、自己負担もジワジワと効いてくるのです。
🔹平均介護費用は「500万〜600万円以上」
- 公的調査によると、要介護になってから看取りまでにかかる費用は
約500〜800万円(※在宅/施設/年数によって変動) - 介護保険の自己負担(原則1割〜3割)+
保険対象外のサービスや物品購入が累積される
例えば…
- 車椅子や介護ベッドのレンタル料
- おむつ・消耗品の購入
- 配食/訪問理美容/通院付き添い
🔹自宅介護でも「月5万〜10万円」程度は見ておく
- 施設に入っていなくても、
ヘルパー利用やデイサービス、福祉用具の購入費などが毎月発生
特に「自費で頼む部分」が増えていくと、家計への負荷がじわじわと高まる構造です。
🔹施設入所の場合、費用はさらに高額に
- 特別養護老人ホーム(特養)でも月7〜15万円
- 民間の有料老人ホームでは月20〜30万円以上かかる場合も
貯蓄がないと「入れる施設が限られる」という事態にも。
🔸「親の年金」だけではカバーできないケースも
- 親の年金が月10万円前後 → 施設費用に足りない
- 自宅介護でも同居家族が働けなくなると、家計全体が圧迫される
✍️ POINT|介護に備えるとは、単に物理的準備だけでなく、「お金の準備」でもある
介護の話を避けてきた理由のひとつが、お金のことを聞きにくいから。
でも、そこを話しておかないと、家族ごと共倒れするリスクがあります。
「親にどう切り出すか」会話の導入法
「介護の話なんて、縁起でもないって言われそうで…」
だからこそ、どう始めるかが鍵になります。
🔹「病気になる前」に話すのがベストタイミング
- 元気なうちこそ、冷静に話せる
- 介護が始まってからだと、感情的にも体力的にも余裕がなくなる
- 「判断力がしっかりしているうちに確認したい」という姿勢が重要
「万が一のとき、〇〇の希望があれば教えてほしい」
と、本人の意志を尊重する聞き方が効果的です。
🔹話題はお金ではなく、安心から入る
避けたい話題に真正面から入ると、相手は身構えてしまいます。
まずはこうした導入から始めてみましょう。
- 「最近○○さん(近所や親戚)が介護のことで大変みたいで…」
- 「自分たちも備えが必要なのかなって思って…」
- 「〇〇(親)が元気なうちに、何か希望があれば聞いておきたくて」
自分が心配しているというトーンで始めると、相手も耳を傾けやすくなります。
🔹メモ・ノート・シートを活用して「質問形式」に
- 介護ノートやエンディングノートを一緒に書く
- 「チェックシートがあるから、気軽に答えてくれたらいいよ」と渡す
話し合いというより、共同作業やアンケートのようにすると、抵抗感が薄まります。
🔹一度で全部決めなくていい
- 何もかも決めようとすると、互いに疲れてしまう
- 「今日は通院や介護サービスについてだけ聞こう」などテーマを絞ること
対話は段階的に進めるもの。
間を空けながら、徐々に深めていくのが理想的です。
✍️ POINT|切り出すのに必要なのは「勇気」ではなく「段取り」
一番の障壁は、「最初の一言」。
けれど、その言葉の選び方と、話すタイミングさえ整えれば、
意外なほど、親は冷静に聞いてくれるかもしれません。
きょうだい間で揉めないための役割分担術
「自分ばっかり負担してる気がする…」
そんなモヤモヤは、多くの家庭で起きています。
介護が始まるときょうだいの関係性にひずみが生まれやすくなるのです。
🔹関わり方に差が出るのは当然
- 近くに住んでいるかどうか
- 既婚・未婚、子育て中、仕事の有無
- 性格・親との距離感・金銭的余裕
状況はそれぞれ違うからこそ、最初に共有と線引きが必要です。
🔹「できること」「できないこと」をはっきりさせる
| 項目 | できる人 | 備考 |
|---|---|---|
| 通院付き添い | A(近居の娘) | 平日の対応が可能 |
| 金銭管理 | B(次男) | 家計に強く冷静な判断ができる |
| 書類申請・制度調査 | C(三女) | ネット調べが得意 |
| 月1の訪問・声かけ | D(遠方の長男) | 負担感少ない支援 |

アルジ(Aruji)
「すべて平等」は不可能。
それよりも「できることを見える化する」方が不満が出にくくなります。
🔹金銭負担の分担は事前に協議を
- 施設費用やリフォーム、訪問サービスの自己負担など
- 親の年金だけで足りないとき、誰が・どの割合で補うのか
「あとから請求された」「話が違う」とならないよう、
費用はできるだけ記録に残す/分担表にしておくのが安全策です。
🔹「感謝」と「報告」が人間関係を支える
- やっている人が「感謝されない」と思うと、心がすり減る
- 離れていても、「報告」「気づかい」を欠かさないことで信頼感が保たれる
手間を担う人も、金銭で支える人も、どちらも介護の担い手です。
✍️ POINT|分担とは「平等」ではなく「納得のバランス」を探すこと
お互いの立場を尊重しながら、感情が爆発する前に話し合う。
家族の関係を壊さずに介護を続けるためには、
この役割分担という知恵が欠かせません。
制度は知っている人が得をする|公的支援一覧
「もっと早く知っていれば…」
介護にまつわる制度は、申請しないと使えない宝の山でもあります。
🔹介護保険サービス(原則65歳以上)
- 要介護認定を受けた方が利用できる
- ヘルパー派遣、デイサービス、訪問看護、リハビリなど多岐にわたる
- 所得に応じて自己負担は1〜3割

アルジ(Aruji)
「とりあえず申請してみる」ことが、最初の大きな一歩です。
🔹高額介護サービス費制度
- ひと月あたりの自己負担額が一定額を超えた場合に払い戻される制度
- 所得区分に応じて上限が異なる
「毎月の請求が高くて大変…」という人でも、あとから戻ってくる仕組みがあります。
🔹介護休業・介護休暇制度(働く家族向け)
- 家族を介護するために仕事を一時的に休むことができる制度
- 一定条件を満たせば介護休業給付金も受け取れる
フルタイム勤務の家族にとって、仕事と介護の両立を可能にする鍵です。
🔹住宅改修費の助成
- 手すりの設置や段差解消など、介護が必要な住環境整備に対して
最大20万円(自己負担1〜3割)まで助成される
在宅介護を続ける場合に、早めに活用しておくと大きな安心になります。
🔹自治体独自の支援制度も見逃さない
- 介護タクシー券/おむつ支給/見守りサービス/家族向け講座 など
- 自治体によって内容は異なるが、「知らなきゃ損」の制度が多い
まずは市区町村の地域包括支援センターに相談するのが最短ルートです。
✍️ POINT|制度は申請主義。使うには「情報」と「行動」が必要
介護における一番の損失は、知らないまま抱え込むこと。
「どうせ無理」と決めつけず、一度情報を取りに行くだけで、
家族の負担が大きく変わることもあるのです。
「自分の人生」が失われないための線引き
「親のことだから、私が頑張らなきゃ」
その気持ちは尊いものです。
でも――頑張りすぎて、自分が壊れてしまっては意味がありません。
🔹介護に「限界」はあっていい
- すべてを完璧にこなそうとしない
- 心身の不調を感じたら「休む」「頼る」ことを最優先に
自分を犠牲にして続ける介護は、親も望んでいないはずです。
🔹できることとできないことを見極める
- 介護は長期戦
- できないことを責めるのではなく、「続けるために調整する」姿勢が大切
たとえば:
- 平日はサービスに任せる
- 休日だけ関わる
- 経済支援だけ担う
🔹「自分の人生」を介護の中に取り戻す
- 趣味/交友関係/仕事への想い――それも、あなた自身の人生
- それらを手放しすぎないよう、「線引き」が必要です

アルジ(Aruji)
介護に向き合いながら、自分を見失わない
そんなバランスの取り方が、現代の介護スタイルとして求められています。
🔹カウンセリング・相談窓口も活用しよう
- 家族だけで抱え込まない
- 市区町村の家族介護支援センターや、精神保健福祉士への相談も選択肢
「第三者に話すだけで心が軽くなった」という声も多く聞かれます。
✍️ POINT|自分のケアもまた、大切な介護
「親の介護をする」
それは尊く、重い選択です。
でも、自分自身をいたわることを忘れてしまったら、支え合いは続かない。

アルジ(Aruji)
一緒に生きるという視点で、介護も人生も、無理のない形で整えていくことが必要です。





