情報が多すぎる。
そんな時代に生きるわたしたちは、「情報の持ち主」であるより、「情報の使い手」であることが求められます。
高校生のうちから、「情報に流されず、自分の判断軸で選べる力」を育てることは、
将来のすべての選択──進学・仕事・人間関係──に直結します。
ここでは、日常の中で自然に身につけられる「情報リテラシーの習慣」について、
わたし自身の経験も交えながら、丁寧にお話ししていきます。
目次
「情報強者」と「情報に流される人」の違い
「情報強者」とは、どんな人だと思いますか?
成績がいい人?
たくさんの知識を持っている人?
それとも、SNSで話題のニュースを誰より早く知っている人?
──たしかに、それらは一部の「情報の扱い方」かもしれません。
でも、わたしが考える情報強者とは、「情報に使われず、情報を使える人」のことです。
情報強者の特徴
情報強者は、次のような力を持っています。
- 情報の真偽やバイアスを見抜く視点を持っている
- 目の前の情報に反応する前に、整理や比較をする習慣がある
- 自分にとっての必要・不要を選ぶ判断軸を持っている
つまり、「情報をただ受け取る」のではなく、「選んで、活かす」ことができるのです。
一方で、流されやすい人の特徴
対照的に、情報に流される人には次のような傾向があります。
- SNSで流れてきた話題を、そのまま信じてしまう
- 興味のあるものだけを追っていて、視野が狭くなっている
- 「みんながそう言っているから」と、自分で確かめずに判断してしまう
これらの違いは、「頭の良さ」や「勉強の成績」ではなく、
どんな視点で情報と向き合っているかによって生まれるものです。
情報リテラシーは資産になる
これからの時代において、情報リテラシーは単なるスキルではなく、
「自分の未来を守るための資産」として位置づけられていくでしょう。
だからこそ、
高校生のうちから情報との距離感を身につけておくことが大きな力になるのです。
高校生がやりがちな情報の失敗例
情報リテラシーは、「できているつもり」がもっとも危うい分野です。
とくに10代後半は、SNSや動画コンテンツを日常的に使いこなしているぶん、
「情報には慣れているけど、扱えているとは限らない」状態に陥りやすいのです。
ここでは、高校生によくある情報の失敗を3つ、整理してみましょう。
1. 拡散を鵜呑みにする
「いいね」が多いから、「○○さんが言ってるから」、
──そうやって情報を信じてしまった経験はありませんか?
実は、拡散されやすい情報ほど、感情を揺さぶる演出が含まれていることが多く、
それが真実かどうかは別問題です。
誰かがシェアしているからといって、それが正しいとは限りません。
2. 偏った検索に気づかない
検索するとき、すでに自分の信じたい方向でワードを打っていませんか?
たとえば、「スマホ 勉強 効かない」と検索すれば、
スマホ=悪という情報ばかりが出てきます。
本来なら「スマホ 勉強 活用」や「勉強法 スマホ 比較」など、
複数の視点から探すことが必要ですが、
自分の先入観に沿った情報ばかりを集めると、視野が狭まってしまいます。
3. SNS依存で視野が固定される
タイムラインに流れてくる情報は、自分の好みやフォロー関係によってつくられています。
そのため、知らず知らずのうちに「似た考え」「似た感情」ばかりを浴びていることも多いのです。
これは、気づかないバイアスの温床になります。
とくに、正反対の意見にふれたときに強い拒否反応が出るなら、
情報環境が閉じているサインかもしれません。
習慣にしたい「3つの情報習慣」
情報との付き合い方は、特別なスキルではなく日常の積み重ねです。
少しの意識と手間で、誰でも「情報強者」への道を歩むことができます。
ここでは、高校生でもすぐに始められる「3つの情報習慣」をご紹介します。
① 比較するクセをつける
1つの意見やニュースだけで判断しないこと。
できれば、同じテーマについて逆の立場から書かれた情報も見るようにしてみてください。
たとえば、ある制度を絶賛する記事を読んだら、それを批判する視点も探してみる。
それだけで、「バランスのとれた理解」がぐっと近づきます。
→ 検索の際に「メリット」「デメリット」「反対意見」などのキーワードを組み合わせると◎。
② メモすることで思考を貯金する
「気になった」「これは使えるかも」──そう思った情報は、スクショではなく自分の言葉でメモしておくのがおすすめです。
なぜなら、メモする行為そのものが整理だからです。
一度言語化することで、情報が「自分のもの」になりやすくなります。
→ スマホのメモアプリでも、ノートでもOK。「なぜ気になったか」まで書くとさらに深まります。
③ 出力してみる(人に話す/書いてみる)
情報は、頭の中にあるだけでは力になりません。
誰かに話す・書いて伝える・投稿してみるといった「出力」があって初めて、自分の理解が試されます。
出力してみて「うまく言葉にできない」と感じたら、それはまだ理解が浅いというサイン。
逆に、「ちゃんと説明できた」情報は、あなたの中でしっかり根づいています。
→ SNS投稿で意見を書いてみる/友達に話す/学校のレポートに活用するなど、形は自由です。
情報源を育てる技術
インターネットには、あらゆる情報が流れています。
でも、その中から「信頼できる情報」だけを拾うのは、案外むずかしいものです。
そこで大切になるのが、「情報源を育てる」という考え方です。
これは、ただ情報を探すのではなく、育てるように信頼の土台をつくっていくという視点です。
情報源も選ぶ力がいる
- 誰が書いているのか?
- その人/メディアは、なぜそれを発信しているのか?
- 同じ人がいつも偏っていないか?
──こうした視点を持つだけでも、情報の質を見極める目が鍛えられていきます。
とくにSNSや動画サイトでは、フォローする人が情報源になります。
信頼できる発信者を意識的に選ぶことで、自分の情報環境を整えることができるのです。
引き出しを育てる=「この人の意見はあとで役立つかも」
今すぐ必要ではない情報でも、「この人の視点、面白いな」と思ったらメモしておく。
それが、将来の引き出しになります。
すぐに使える情報ばかりを求めると、目先の答えしか拾えなくなる。
でも、「あとで役立つかも」と思える情報をストックしておくと、
予想外のタイミングで大きな武器になることがあります。
→ ブックマークや読書ノート、フォローリストなど、自分だけの知識の地図を育てるような感覚で。
情報源の「更新」も忘れずに
信頼していた情報源でも、時間が経つと内容が古くなったり、発信者のスタンスが変わることもあります。
だからこそ、「定期的に見直す」ことも大切です。
- まだ信頼できるか?
- 最近は偏りがないか?
- 新しい良い情報源が出てきていないか?
──これらを点検しながら、自分の「情報の森」を手入れするイメージで、情報源と付き合っていきましょう。
友達関係とSNSリテラシーの交差点
情報との付き合い方は、人間関係の中にも深く関わっています。
とくに高校生にとって、SNSは「情報ツール」であると同時に「人間関係の場」でもあります。
その2つが交わる場所にこそ、気づきにくい落とし穴があるのです。
「いいね」が怖くなるとき
たとえば──
・見たくないのに、友達がシェアしてるから見る
・本音では反対だけど、波風立てたくないから「いいね」を押す
・何か言うと「空気が読めない」と思われそうで黙ってしまう
こうした感覚に、心当たりはないでしょうか?
これは「情報の扱い」と「人間関係のバランス」が見えないところで絡み合っている状態です。
無意識の同調圧力に気づくこと
SNS上の人間関係には、「空気に合わせる」ことが前提になりがちな文化があります。
でも、情報リテラシーとは、「空気よりも内容に目を向ける力」です。
だからこそ、自分の気持ちを一歩引いて観察してみることが大切です。
- 「いま、自分は納得してる?」
- 「ただ流れに乗っているだけじゃないか?」
- 「無理してないか?」
──この問いかけを、習慣にしてみてください。
情報も、関係も、自分の意思で選んでいい
大切なのは、「全部に反応する必要はない」ということ。
見ない自由も、距離をとる自由も、あなたにはあります。
- 意見を保留する
- コメントしないという選択をする
- 見ない時間をつくる
こうした行動は、決して「逃げ」ではなく、自分の軸を守る力でもあります。
情報の海に飲み込まれないように。
そして、人間関係に流されすぎないように。
SNSの中でも、あなた自身の感覚を信じていいのです。
まとめ|「何を信じるか」は、日々の習慣と視点から生まれる。
情報は、すべての人の目の前に同じようにあるようでいて、
実際には「どんな情報にふれるか」「どう受けとるか」は、人によってまったく異なります。
つまり、何を信じるかは、偶然ではなく習慣と視点の結果なのです。
わたしたちは、情報によって動かされる生き物です。
けれど同時に、情報を使って未来をつくることもできます。
今日からできることは、ほんの小さな習慣からでかまいません。
- 情報を比較してみる
- ちょっとした気づきをメモしてみる
- 思ったことを言葉にしてみる
この3つを繰り返すだけでも、
いつのまにか「情報に流される人」ではなく、「情報を選べる人」へと変わっていけるはずです。
情報は、敵ではありません。
使いこなせば、それはきっとあなたの味方になってくれます。
そしてその力は、これからの社会で、生きるうえで、何よりも強い武器になります。





