「夢って、持たなきゃダメなの?」
「将来のことなんて、まだ分からない…」
高校生の多くが一度は抱えるこの問いには、明確な正解は存在しません。
だからこそ――焦らず、今の自分にできる「考え方の設計」から始めてみましょう。
将来が見えないことは、決して劣っている証ではなく、
まだ何にでもなれるという余白なのです。
ここでは、
進路に迷うあなたが「まず踏み出す3つの思考ステップ」を、
秩序立てて解説していきます。
目次
「分からない」ことは、実はスタート地点
「何をしたいか分からない」
この言葉は、よく不安や焦りとセットで使われます。
けれど――わたしはそれを、「まだラベルを貼っていない地図」のように見ています。
❖ 誰もが未定のまま進んでいる
高校生という時期は、「将来やりたいことがはっきりしている人」が目立ちます。
資格の勉強に打ち込む人、夢に向けて進んでいるように見える人…。
ですが実際には、進路が確定している人の方が少数派です。
ほとんどの人が、
「たぶんこっちかな」
「とりあえず進んでみよう」
そんな仮決めで進みながら、自分を探しています。
つまり――
「分からない」は、出遅れではなく、まだ探している途中というだけなのです。
❖ 分からないという状態は、思考が始まっている証
何がしたいか分からないという悩みは、
裏を返せば、「ちゃんと考えているからこそ生まれる問い」です。
まったく関心がなければ、不安にもなりません。
つまり「分からない」という感情は、思考が始まった証拠です。
その状態を否定せず、一歩ずつ選べる力を育てることが、
このテーマの核心になります。
興味のかけらを見つける3つのヒント
「何がしたいか分からない」という状態にあるとき、
人はつい完璧な将来像を探してしまいがちです。
たとえば、
「夢=職業名で言えないとダメ」
「志望理由は立派じゃないといけない」
そんなプレッシャーを感じていませんか?
ですが、未来は今ある興味のかけらから育てるものです。
ここでは、それを見つけるための3つの視点を紹介します。
🔹①「やってみたい」と思ったことを拾い直す
- 過去に少しでも「楽しそう」と感じたもの
- 人がやっていて「羨ましい」と思ったこと
- SNSで目に留まった「何気ない投稿」
こうした反応した瞬間には、小さな興味の種が隠れています。
すぐに将来の職業に結びつかなくても構いません。
心が動いた方向を、自分の中でリスト化してみましょう。
🔹②「長く続けていること」にはヒントがある
夢中になって時間を忘れるもの。
誰に言われなくても自然にやっていること。
これは「飽きにくい」という才能です。
- 絵を描く/音楽を聴く/文章を書く
- 人の話を聞くのが好き
- 情報を集めるのが得意
それらは、職業の核として活かせる要素になるかもしれません。
🔹③「これだけは嫌」という逆方向も有効
何をしたいか分からないときは、
「何がイヤか」から考える逆引き法も効果的です。
たとえば、
「大人数の前で話すのはイヤ」→ 裏方の仕事に向いているかも
「毎日同じ作業は無理」→ 変化のある職種が向いているかも
避けたいことが分かれば、選択肢を絞り込む材料になります。
このように、
「完璧な将来像」ではなく「断片の集積」を探すことで、
未来への視界は徐々にクリアになっていきます。
情報の海に溺れない、思考の整理法
それでは、体系的に整理してみましょう。
スマホやSNSがある時代。
情報は足りないのではなく、むしろ多すぎることで迷いが深まることがあります。
- 「この大学がいいらしい」
- 「こっちの職業は将来性がないかも」
- 「みんな起業してる」「資格が大事って聞いた」
あらゆる選択肢が目の前に現れては、
次の瞬間には「違う意見」によって上書きされる――
この状態が、情報疲れと選択マヒを引き起こします。
ここでは、情報に振り回されないための3つの整理法を紹介します。
🔹①「目的」を決めることで、情報のフィルターをかける
まず、知りたい情報を得る前に、「なぜそれを調べたいのか」を意識しましょう。
たとえば:
- 「この大学に行く意味を知りたい」
- 「この資格が役に立つか判断したい」
という目的付きの検索を行うと、
似たような情報でも、自分に必要な要素だけを抽出しやすくなります。
🔹②「地図にする」=見える化の技術
思考が混乱しているときは、
頭の中だけで考えず、紙やアプリで図解にしてみるのがおすすめです。
- やりたいこと
- 気になっている職業
- 向いていないと感じる分野
これらをマインドマップや箇条書きにすることで、
自分の思考がどこで止まっているかが見えてきます。
🔹③「考えたこと」を言葉にしてアウトプットする
- ノートに書く
- 家族や友人に話す
- SNSでメモ投稿する
どんな形でもよいので、自分の思考を「外に出す」ことが大切です。
言葉にすることで、自分の気持ちが整理され、
「本当はどうしたいのか」が少しずつ浮かび上がってきます。
情報に飲み込まれるのではなく、
「情報を使う側」になるための練習こそが、
この時期に必要な見えないスキルなのです。
選べない不安を軽くする「仮決め」の技術
「本当にやりたいことが見つかるまで、決められない」
そうやって立ち止まってしまう人が多くいます。
けれど、完璧な正解を見つけてから動こうとすると、いつまでも動けません。
そこで有効なのが、「仮決め」という考え方です。
🔹とりあえずでいい。仮の目的地を設定する
たとえば、こういう言い方をしてみてください:
- 「今は、とりあえずこの進路に向けて動いてみよう」
- 「第一志望ではないけれど、こっちの道も試してみる」
これは「妥協」ではなく、行動の起点を作るという知的判断です。
動きながら学べることは多く、
仮決めがきっかけで「思わぬ方向に進路が見えてくる」こともあります。
🔹仮決めは「変更可能」であると自分に許可する
大人でさえ、進路を何度も変えながら人生を組み立てています。
- 転職する人
- 学び直す人
- 複業する人
つまり、「一度決めたら一生変えられない」なんてことはないのです。
むしろ柔軟に変えながら、自分に合った道を探していくことが、
これからの時代には自然なスタイルとなっていきます。
🔹仮決めに必要なのは「一歩分の情報」と「一歩分の覚悟」
決めきれないときに求められるのは、
完全なマップではなく、次の一歩です。
- 今ある情報で「いま決められること」を選ぶ
- その選択が間違っていたら「また考え直す」
この繰り返しが、やがて「決める力」を育てていきます。
進路に限らず、人生には試してから分かることが数多くあります。
仮決めは、「迷ったままでも動いていい」という、未来への優しい許可なのです。
10代後半で考える将来設計の意味
10代後半――
社会に出る直前のこの時期に、将来について考えることは、
とても重たいようでいて、実は「柔軟に組み立てられる特権」でもあります。
🔹将来設計は「確定」ではなく「試作図」
「将来設計」という言葉を聞くと、
人生の完成図のようなものを描かなければいけない気がしてしまいます。
けれど実際は、将来設計とは試作図にすぎません。
建物で言えば、ラフスケッチや仮設計のようなもの。
何度でも描き直せるし、変更も追加もしていい。
この描き直し自由という性質こそ、
10代後半に将来を考えるうえで大切にすべき視点です。
🔹設計は「長さ」より「方向」
周りが見えてくると、
「自分はまだ何も決まっていない」ことが怖くなるかもしれません。
でも、設計に必要なのは長さではなく、方向です。
- 自分は何に価値を感じるのか
- どんなことに怒りや喜びを覚えるのか
- どんな大人になりたいのか
これらの感情や価値観は、進む方向を定めるコンパスになります。
🔹設計に必要なのは、他人の地図ではなく「自分の基準」
世の中にはたくさんの正しそうな人生の地図が流通しています。
- 一流大学→大企業→安定
- 好きを仕事に→自由→充実
- 海外→独立→成功
でも、それが自分に合っているかどうかは別の話です。
将来設計とは、
「どんなレールに乗るか」ではなく、
「レールの敷き方を、自分の感覚で決めていく行為」です。
迷うことは、自分と向き合っている証です。
そしてその迷いは、10代後半という設計し直し可能な時期にこそ、
最大の力を発揮します。
🪞まとめ|分からないは、思考を止める言葉ではない
「将来何がしたいか分からない」――
この言葉を、自分を責める理由にしないでください。
それは、まだ見ぬ未来に対して誠実に向き合おうとしている証です。
🔹この記事で伝えた3つのステップ
- 「分からない」は、始まりのサイン
誰もが未完成のまま、迷いながら進んでいる。 - 興味のかけらを見つける視点を持つ
小さな違和感や憧れが、将来への種になる。 - 仮決めを使って、考えながら動く
完璧な答えがなくても、一歩目は踏み出せる。
「何がしたいか分からない」のではなく、
「探してもいいことを、まだ許せていないだけ」かもしれません。
進路も将来も、変わっていいものです。
そして変えていいという感覚は、知ることでしか得られません。
知は、秩序を宿したときにこそ、光を放ちます。





